相続時精算課税制度の利用
贈与税は、その年の1月1日から12月31日までに受けた贈与財産
の合計額をもとに、税額が計算されます。
ただし、贈与税には基礎控除額の110万円があり、
原則として、この110万円を超える金額に対して、贈与税が課税されます。
逆に言うと、毎年110万円以下の
これを「暦年課税」といっています。
贈与税の計算方法については、この毎年課税される暦年課税による方法と
もうひとつ相続時精算課税制度による方法があります。
この相続時精算課税制度は、贈与税と相続税を一体化させたような制度で、
受贈者と贈与者が一定の要件を満たす場合に利用することができます。
この制度を利用すると、
特別控除額の2,500万円までは贈与税がかかりません。
しかし、相続時に、相続精算課税制度による贈与財産を相続財産に加算し、
相続税額を計算することになります。
予想される相続財産が、相続税の基礎控除額である場合には、
贈与税・相続税共に支払うことなくスムーズに財産移転が
できるという点で優れた制度です。
★相続時精算課税制度のポイント |
●適用対象者
贈与者は65歳以上の父・母
受贈者は20歳以上の子や代襲相続人である孫
●適用手続き
贈与時には、特に手続きをする必要はありませんが、贈与を受けられた方は、翌
年の2月1日から3月15日までに、最寄りの税務署に「相続時精算課税選択届
出書」を贈与税の申告書に添付しなければなりません。
この選択は、贈与者である父・母ごとに、受贈者である兄弟姉妹が別々に、選択
することができます。
よって、父から2,500万円、母から2,500万円の贈与を受けることも可
能です。
しかし、一度、相続時精算課税制度を選択すると、相続時まで継続して適用され
ます。
●贈与税額の計算
受贈者は、相続時精算課税制度の贈与者からの贈与財産について、他の贈与財産
と区別して贈与税の計算を行います。
贈与税額は、相続時精算課税制度による贈与財産の合計額から特別控除額2,5
00万円(すでに適用を受けて控除した残額)を控除した後の金額に、一律20
%の税率を乗じて計算します。
例えば、1年目に1,500万円、2年目800万円、3年目に500万円を贈与した場合
<1年目>
課税価格 特別控除額
1,500万円 - 1,500万円 = 0万円
2,500万円>1,500万円 → 1,500万円(特別控除額)
<2年目>
課税価格 特別控除額
800万円 - 800万円 = 0万円
2,500万円-1,500万円>800万円 → 800万円(特別控除額)
<3年目>
課税価格 特別控除額
500万円 - 200万円 = 300万円
2,500万円-(1,500万円+800万円)<500万円 → 200万円(特別控除額)
2,500万円までの贈与については贈与税を支払わなくてもよいのですが、3年目
については、2,500万円を超える300万円に20%の贈与税(60万円)がかかり
ます。
4年目以降は、制度対象者からの贈与に対しては、すべての財産について20%
の贈与税が課税されます。
●相続税額の計算
相続時精算課税制度による贈与財産を相続財産に加算して、相続税を計算し、そ
の相続税額から既に支払った贈与税を差し引いて納付税額を計算します。
加算する贈与財産の価額は、贈与時の申告価額です。
計算した相続税額より既に支払った贈与税額が多い場合には、その差額が還付さ
れます。
●相続時財産課税制度利用のメリットとデメリット
○メリット
・相続税の基礎控除額以下の財産の方については、2,500万円までの贈与につ
いては贈与税・相続税共に支払うことなく財産移転ができます。
※将来、基礎控除額が減額される可能性がありますので、ご注意ください。
・効果的な資金援助ができます。
子供への住宅資金の援助や事業資金拠出など、「目的のある効果的な資金援
助」ができます。
・財産分けが早くできます。
遺言でご自身が思うように財産分けをすることも可能です。しかし、遺言に
も弱点があります。相続時精算課税制度を利用することで、生前に思い通り
の財産移転が可能になります。
○デメリット
・暦年課税には戻れません。
一度、相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者については暦年課税に
戻ることはできません。
・相続税対策には向きません。
相続時精算課税制度を選択すると、贈与財産と相続時に残っている財産共に
相続税がかかるため、基本的に相続税を安くすることができません。
相続税対策を行うのであれば、早めに暦年課税を利用して毎年コツコツと贈
与していく方が相続税を安くすることができます。
・税制改正により、相続税課税対象者になる可能性がある。
現行では、相続税がかからない方でも、将来、相続税の基礎控除額が見直さ
れて、相続税の課税対象者となる場合があります。
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