【相続手続】限定承認について
相続が発生すると、被相続人(亡くなられた方)が亡くなられた時点から、
相続人全員が法定相続分の割合に応じて、
プラスの財産及びマイナスの財産の一切を受け継ぐことになります。
しかし、
明らかに、借金等のマイナスの財産が預貯金等のプラスの財産より多い場合や
被相続人と相続人が疎遠で、借金がどの程度あるのか分からない場合もあります。
そのような場合でも、相続人が被相続人の借金を自分の資財を投げ打ってでも
返済しないといけないのかと言うと、そういう訳ではありません。
相続手続きには、残された相続人が不利益を受けないですむ制度があります。
それが、相続放棄と限定承認という制度です。
ここでは、限定承認についてご説明します。
★限定承認とは?
限定承認とは、被相続人の財産がプラスの財産が多いのか、
それともマイナスの財産が多いのかが不明な場合、
一応、遺産も借金も受け継ぐが、
借金の支払いの責任は遺産の限度で行う手続きのことをいいます。
プラスの財産 マイナスの財産
1,000万円 - 500万円 = 500万円 ⇒ 500万円相続する
1,000万円 - 2,000万円 = -1,000万円 ⇒ 相続しない
また、限定承認は相続放棄と異なり、
相続人全員の総意により行わなくてはなりません。
よって、相続人のうち一人でも反対の場合は、
限定承認を行うことはできません。
また、官報への公告手続きや財産の調査や配当など
手続きが大変面倒であるため、ごくわずかしか利用はされていません。
結局、「相続放棄してしまおう!」
という選択をされる方が多くいらっしゃいます。
しかし、次のようなケースについては、
手間や費用がかかっても限定承認をした方がよいでしょう。
1.財産はそれなりに残っているものの、疎遠で債務の存在が不確かな場合
2.相続財産がいくらになるか不明で、債務超過かどうかわからない場合
3.父親名義の不動産をどうしても残したい場合
4.相続放棄をすると、次の順位の人が相続人となってしまうため、その方々に相
続放棄の手続きの面倒をかけたくない場合。
ご注意! ~知らないでは済まされません!~ 限定承認手続きが終了するまでの間に、相続財産を処分(被相続人の債務を支払うなどの行為も)す ると単純承認したとみなされ、相続放棄も限定承認もできなくなってしまいますのでご注意ください。 |
★限定承認手続きの流れ
① 申立ての受理
○申立てに必要な書類(下記、申立てに必要な書類参照)を用意して、被相続人
の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して限定承認の申述(申立て)を行
います。
② 相続財産管理人の選任
○家庭裁判所へ申立て後、1~2週間くらいで申立てが受理された旨の通知(限
定承認の申述受理申立事件の審判通知)が届きます。
○相続人が一人しかいない場合はその相続人、相続人が複数いる場合は、相続人
の中から一人が相続財産管理人として選任されます。
相続財産管理人は、自分の財産を管理するのと同様の注意を払って相続財産を
管理しなければなりません。
③ 官報への公告、債権者等の申出
○限定承認者は、限定承認した日から5日以内に一切の相続債権者(被相続人に
対して債権を持っている者)と受遺者(遺言により財産を受けた者)に対して、
官報(新しい法律の公示や施行等を公に知らせる為の国立印刷局が発行する機
関誌)に限定承認手続きが開始したこと及び2ヶ月以内に債権の請求の申出を
するように公告しなければなりません。
○官報掲載日から2ヶ月、債権者等の申出を待ちます。
○2ヶ月の間に、債権者等の申出がなければ申立て時の財産にて、申出があれば
新たに債権者等として追加し、2ヶ月後、財産の確定となります。
○官報への公告手続方法については、こちらのWEBサイトを参考にして下さい。
官報公告掲載WEBサイト
④ 財産の分配
○夫妻がある場合、遺産から弁済に充てます。
○負債を弁済した後、残る遺産がある場合、相続対象者で財産を分配します。
特に、取り決めが無ければ、法定相続分に従った分配となります。
○仮に、債権調査をした結果、遺産より負債が多くなったとしても、限定承認手
続きをした相続人については、遺産より多い負債について弁済する義務がなく
なります。
★限定承認の落とし穴
限定承認は、
プラスの財産の範囲でマイナスの財産を引き継ぐことができる便利な制度ですが、
税法上は大きな落とし穴があります。
通常、相続財産と言えば、
相続税の対象となりますが、非常に大きな基礎控除があり、
税金がかかる方というのは全体の5%程でしかありません。
しかし、限定承認をすると被相続人に対して、
財産を時価で相続人に対して譲渡したとする「みなし譲渡所得課税」がかかります(所得税法第59条)。
つまり、被相続人に対して、所得税が課税されることになります。
ただ、譲渡所得税というのは時価での売却収入があったものとみなし、
そこから、取得費等の費用を差し引いた所得に対して課税されます。
よって、購入時より値上がりしている土地等がある場合に対して、
譲渡所得税が課税されることになります。
現金の場合には、含み益はありませんので、譲渡所得税は課税されません。
譲渡所得税は被相続人に対してかかりますが、
被相続人は既にお亡くなりになられています。
よって、その譲渡所得税につきましては、
相続人が、被相続人の亡くなられた日の翌日から4ヶ月以内に準確定申告をして、
被相続人の代わりに納付しなければなりません。
★限定承認の申述方法
●申立てを行う裁判所
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てして下さい。
岸和田市、泉大津市、貝塚市、和泉市、忠岡町、泉佐野市、泉南市、阪南市、熊
取町、田尻町、岬町の場合は、大阪家庭裁判所岸和田支部に申立てます。
大阪家庭裁判所 岸和田支部
大阪府岸和田市加守町4‐27‐2
南海本線春木駅から徒歩12分
TEL 072-442-6803
家庭裁判所によっては、郵送で申立てが可能な場合がございます。
詳しくは申立先の家庭裁判所にご確認下さい。
●申立てをすることができる方
相続人全員が共同して行わなくてはなりません。
●申述期間
申述期間は、原則として「自己の為に相続の開始をした日から3ヶ月以内」にし
なければなりません。
被相続人が亡くなった日からではなく、自分が相続人となったことを知った日か
ら3ヶ月ですので、そのことを申述時に疎明する必要があります。
但し、この期間は申述期間内に相続財産の状況を調査してもなお、相続を承認す
るか限定承認もしくは、申立てにより、家庭裁判所はその期間を更に3ヶ月間延
長してもらうことができます。
また、相続人が複数いる場合は、相続人の最後の一人が申述期間が満了するまで
の間、申述は行えます。
●申述に必要な書類
・相続の限定承認申述書 1通
・申立人(申述人)の戸籍謄本 各1通
・被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍(除籍、改製原戸籍)
・被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票
・財産目録
財産目録には、すべての財産を漏れなく記載する必要があります。もし、故意
に一部又は全部の財産を記載しなかった場合は、単純承認とみなされてしまい
ますのでご注意下さい(民法第921条第3項)。
※事案により、上記以外の書類が必要となる場合もありますので、事前に申立
先の家庭裁判所にご確認下さい。
こちらの裁判所ページにも、書式があります。
≫ 相続の限定承認の申述(裁判所WEBサイト)
●申述に必要な費用
・申立手数料(1件につき800円の収入印紙)
・郵便切手(申立てをする家庭裁判所により異なります)
大阪家庭裁判所岸和田支部・和歌山家庭裁判所の場合
80円切手 × 5枚
10円切手 × 5枚
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★業務対応エリア
大阪府 : 堺市・和泉市・高石市・泉大津市・忠岡町・岸和田市・貝塚市・熊取
町・泉佐野市・田尻町・泉南市・阪南市・岬町
和歌山県: 和歌山市・岩出市・紀の川市・海南市
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